小児眼科

小児眼科と一般眼科の主な違いは、治療対象と目的です。大人がかかる眼科は目の疾病の治療を主体としていますが、小児眼科は子供の目の正常な発達促進や目の健康維持に特化した診療科で、目的は主に成長過程にある子供たちの目が正常に機能するようサポートすることです。

子供の目の健康を守るためには、子供自身が目の異常や自覚症状をうまく伝えられないことが多いため、保護者が注意を払い、定期的に眼科を受診することが重要です。

発達段階で目の異常を抱えたまま成長すると、大人になっても視力が回復しない可能性があるため、検診での視力障害の早期発見と治療が不可欠です。

ザ・タワー十条よつば眼科医院

院長久米川浩一

大学病院や総合病院で、様々な症例に対して診察・治療を行ってきた経験から、目のお悩みに対する幅広い知見を持っています。
本院「きたあやせよつば眼科」と3つの分院のうち一つ、ザ・タワー十条よつば眼科医院の院長として2025年に就任。

子供の目の発達について

小児の視力は、生後数ヶ月で発達を始め、5歳ごろには大人とほぼ同じ1.0以上となり、6〜8 歳の時期に完成します。その成長過程で何らかの問題が発生すると、後々さまざまな影響が出ることが分かっています。小児期は心身の成長が著しく、特に視機能の発達において非常に重要な時期と言えます。
子供は大人のように目の疾患について自覚症状をうまく伝えられないことが多く、病気の発見や治療が遅れることがあります。
また、小さなお子様は、よく見えていなくてもそれがあたりまえの状態と感じているため、問題に気づかないことがよくあります。
近視、遠視、乱視といった屈折異常や、弱視、斜視などの眼の位置の異常などが、小児眼科でよく見られる疾患です。これらの疾患において最も重要なのは、早期発見と早期治療です。
治療を早く始めるほど、最終的に良好な結果が得られる可能性が高まります。
3歳児や就学前、学校健診で目の異常について指摘された場合は、放置せずにすぐに対処することが大切です。
また、保護者の方が少しでもお子様の視機能の様子におかしいと感じることがあれば、早めに眼科へご相談ください。

まずは以下の目の症状があればご受診ください。

小児眼科ではお子様の目が正常に機能・発達することをサポートするのが目的です。小児眼科を受診するタイミングは、症状の有無や年齢によって異なります。一般的には、生後6ヶ月、3歳、就学前、その後は2年ごとに定期検診を受けることが推奨されています。当院では、お子様の大切な目の発達期間に合わせて最適な検査・治療を行っています。

以下のような眼の症状に心当たりがあれば、すぐにご相談ください。

瞼がしっかり開かない
目が揺れる
目をしょっちゅうこすっている
おもちゃを目で追わない
瞳が白く濁って見える
片目を隠すと嫌がる
フラッシュを焚いて撮影すると、片方の目だけ違う色に光って写る
テレビや本に近づいて見る
よく眩しそうに目を閉じる
目を細めて物を見る
顔を傾けて物を見る
おかしな目つき（上目づかいや横目づかいなど）をする
周りの人にしっかり目を合わせない
何か物にぶつかりやすかったり、転びやすかったりする
いつも同じ方に顔を傾ける

斜視

小児の「斜視」は、両眼が対象物の方向に揃わず、片方の目が違う方向を向いている状態です。子どもの約2％に見られ、小児眼科でみられる代表的な病気の1つです。早期発見と適切な治療が重要で、特に幼児期は両眼視機能の発達にとって重要な時期です。

斜視の種類

内斜視	片方の目が内側を向いている状態です。乳児内斜視や調節性内斜視、後天性内斜視とさらに細かく分類されます。
外斜視	片方の目が外側を向いている状態です。間欠性外斜視などがあります。
上斜視	片方の目が上側を向いている状態です。
下斜視	片方の目が下側を向いている状態です。

内斜視

「内斜視」とは、両目の視線が目標に向かって揃わず、片方の目が内側（鼻側）を向いてしまう状態のことです。
時々だけ内側を向いてしまうタイプと、常に内側を向いてしまうタイプがあります。
常に斜視になっているタイプの場合、両目を使うことができませんので眼鏡や手術による治療が必要です。
中でも以下のタイプには特に注意が必要です。

乳児内斜視

生後6ヶ月以内に発症する、目が常に内側を向く状態。片目または両目が影響を受け、視力や立体視の成長に悪影響を及ぼす可能性があるため、生後8か月以内の手術が推奨される。

調節性内斜視

遠視が原因で、近くのものを見ようとするときに、眼が内側に寄ってしまう状態を指します。。遠視を補うためのピント調節が目の位置に影響を与え、視力の成長を妨げることがあるため、眼鏡による矯正が必要。

後天性内斜視

生後6ヶ月以降に発症した、片方の目が内側に寄ってしまう状態。遠視に伴うものや、まれに脳腫瘍などの病気が原因とされています。近くの画面を長時間見ることで目が内側にズレる可能性があり、異常がないか精密検査を受けることが推奨されます。

外斜視

「外斜視」とは、片目が外側（耳側）に向いてしまう状態です。

時々だけ外側を向いてしまうタイプと、常に外側を向いてしまうタイプがあります。普段は両目がまっすぐ前を向いているが、疲れている時やぼんやりしている時に片目が外にずれる「間歇性外斜視」が多く見られます。

常に斜視になっているタイプでは、両目を使うことができませんので眼鏡による矯正や手術による治療が必要です。

上斜視・下斜視

「上斜視・下斜視」とは、片方の目の視線が上向きまたは下向きにずれている状態を指します。

見る方向によってズレ方が異なるタイプがあり、その種類は多岐にわたります。眼球を動かす筋肉の異常や、神経系の問題、または他の疾患が原因で起こります。代表的な例として、先天性上斜筋麻痺があり、これは生まれつき上斜筋が弱いために発生する斜視です。この状態では、両目で物を見るために顔を傾けることが特徴的です。

顔を傾ける状態が長期間続くと、骨格に影響を及ぼす可能性があるため、眼鏡による矯正や手術による治療が必要になることがあります。

斜視の検査

斜視には様々な種類があり、早期発見と適切な治療が重要です。小児眼科では、さまざまな検査を組み合わせて斜視の診断と治療方針を決定します。

乳児の診察では、光を当てた際に両眼の瞳孔からの反射光が同じ位置にあるかを確認します。

年齢が上がるにつれて、より詳細な検査が可能になります。

子供の斜視検査には、以下のような方法があります。

眼位検査

角膜反射法：両眼をペンライトで照らし、瞳孔の反射光が同じ位置にあるかを確認します。
遮閉試験：片眼を隠して、眼球の動きを観察を行います。プリズムを使用することもあります。

眼球運動検査

玩具やペンなど、子供が興味を持つ物を動かし、眼球がスムーズに動いているかを確認します。

視力検査

裸眼の視力と、屈折を矯正した後の視力を測定します。
0〜3歳の小さなお子様でも受けられるように、それぞれの年齢に応じた視力検査が行われます。

両眼視機能検査

シノプトフォア（大型弱視鏡）を用いた検査や、立体視の検査、残像検査、色覚検査などを行います。

斜視の治療方法

小児の斜視の治療方法は、原因や程度によって異なりますが、、視能訓練、目を動かす筋肉を直接治す「斜視手術」のほか、遠視や近視、乱視に対する「眼鏡の使用」、目の位置ずれに合わせて目に光が真っ直ぐ入るようにするための「プリズム眼鏡の使用」などがあります。
斜視治療の目的は、目の位置を真っ直ぐにすることで顔の見た目の状態を良くすることもありますが、とくに大切なのが両目を使ってものを見る力（両眼視）を得ることです。
両眼視の発達にはタイムリミットがあるので、それまでに両目を使う状態を作ることが大切です。

視能訓練

抑制除去訓練、輻輳訓練、融像訓練などを通して、視力の発達を促し、両眼視機能を改善することを目指します。小児の場合、今後斜視が悪化するような状態があるか確認し、必要があれば斜視訓練により目の位置をずれないよう維持できる力を高めてゆきます。

両眼で見たものを脳で一つの像にまとめる能力を回復する矯正訓練で目の位置のずれの認識ができなくなっている状態の改善を促します。

斜視手術

目を正しい位置に矯正し、視機能の改善や外見上の改善を目指す治療法です。生後6か月以内に目の位置が大きくずれている場合、2歳までに手術が必要とされています。この手術では、眼球を支える6種類の筋肉（外眼筋）の位置を調整し、目の位置を改善します。目が外側を向いている場合は、外直筋を後方に移動させるために、まず筋肉を眼球から切り離し、後ろに縫い付ける手法が取られます。

生後6か月以降で目の位置のずれが少ない場合は、斜視用の眼鏡や斜視訓練を用いて治療を行います。斜視用の眼鏡を外すために、小学生の時に手術を行うこともあります。

眼鏡やコンタクトレンズによる矯正

眼鏡やコンタクトレンズを使用することで、斜視の原因となる遠視や近視を矯正し、両眼で正常に視覚を得られるようにします。特に、遠視が原因の内斜視（調節性内斜視）や、左右の視力の違いによる屈折性不同視が原因の斜視に対して、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正は効果的です。

子供の斜視に眼鏡を使用する期間は、斜視の種類や程度、視力の発達状況によって異なります。一般的に、3歳頃までに治療開始し、6歳までに視力の発達を促すことが重要とされています。

しかし、場合によっては8歳以降も眼鏡の使用を続けることもあります。

プリズム処方

眼鏡にプリズムを組み込むことで光を屈折させ、斜視のある目が正常な目と同じ視標を見えるようにする方法です。

小児の間欠性外斜視の場合、プリズム眼鏡で複視を軽減したり、両眼視機能を改善したりする効果が期待できます。また、乳幼児内斜視の場合、早期からプリズム眼鏡を装用することで、手術を回避できる可能性もあります。

プリズム眼鏡を使用することで両眼視機能を確保しやすい環境を整えることができます。

弱視

小児の弱視とは、視力の発達期に、何らかの原因で視力が十分に発達しない状態のことです。眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても、視力が1.0まで上がらない場合を指します。
視機能は生まれてすぐに備わるものではなく、乳幼児期からものを見ることで向上していくものです。この大切な時期に強い遠視・乱視、片方の瞼が開かない（眼瞼下垂）、病気（先天白内障や角膜混濁など）によって、視機能の発達が阻害されてしまって、片目または両目の視力が眼鏡をかけても視力が出ない状態にあると弱視と診断されます。
小児の弱視の初期症状には、目を細める、片目を隠すと嫌がる、近くで物を見る、顔を傾ける、視線が合いにくい、左右の目の大きさが違う、まぶしがる、目が揺れるなどがあります。
弱視の大きな問題点は子供本人の自覚が難しく、ご家族も発見が困難なことが多いことです。この期間に原因を取り除く治療によって、視機能の発達を促進し、良好な視力を得ることが可能です。
気になることや不安なことがあれば、できるだけ早い眼科受診をおすすめします。

弱視の種類

小児の弱視は、大きく分けて「機能弱視」と「器質弱視」の2種類に分類されます。「機能弱視」は、さらに「屈折異常弱視」「不同視弱視」「斜視弱視」「形態覚遮断弱視」の4種類に分けられます。「器質弱視」とは、目の器質的な原因（例えば、角膜の混濁、網膜の異常など）によって視力が発達しない状態です。

屈折異常弱視

遠視や乱視などの屈折異常が原因で、網膜にピントが合わず、視機能が十分に発達しないことによって生じる弱視です。

不同視弱視

左右の目の屈折度数に大きな差があるために起こる弱視で、屈折異常が大きい方の目でピントが合わず、その目の視力が発達しない状態です。

斜視弱視

斜視によって、片方の目が使われなくなり、視力が発達しない状態です。

形態覚遮断弱視

主に眼の疾患（先天性白内障や角膜混濁など）が原因で、網膜に十分な刺激が得られず、視力が未発達な状態です。

弱視の検査

弱視が疑われる場合には、視力検査をはじめ、以下のようなさまざまな検査を実施します。
弱視スクリーニング検査では、専用の機器を用いて視力や眼位を検査し、弱視の危険因子を検知する検査です。生後6か月以降の乳幼児から受けることができ、乳幼児健診や3歳児健診、就学前検診などで実施されます。

弱視の検査	検査の内容
視力検査	裸眼視力と屈折異常を矯正した後の視力を測定します
屈折検査	遠視、近視、乱視の程度を評価します
眼位検査	目のずれ（斜視）や目の動きについて調査します
両眼視機能検査	両目を使った視覚の働きを確認します
眼球運動検査	目の動きがスムーズかどうかをチェックします
弱視スクリーニング検査方法	屈折検査：器械を覗いてもらったり、目に光を当ててその反射を読み取る方法があります。両眼視機能検査：検査用の眼鏡を装用し、絵や図形を見てもらいます。

弱視の治療方法

子供の弱視の治療には、眼鏡をかける、目薬を使用する、訓練を行うなどの方法があります。早期発見、早期治療が重要です。特に弱視が疑われた場合は、速やかに眼科を受診しましょう。

眼鏡をかける

遠視や乱視などの屈折異常を矯正する眼鏡をかけることで、目の位置が安定し、両眼で物を立体的にみる機能（両眼視機能）も育ちます。

目薬を使用する

アトロピン等の目薬をいれて一時的に見えにくくして、悪い方の目の発達を促す方法をおこないます。

訓練を行う

視力の左右差があれば視力が良い方の目をアイパッチ（眼帯）で隠して、弱視になっている目を多く使う弱視の訓練をします。

POINT

斜視弱視の治療は、上記の方法を組み合わせて行います。訓練の方法は、良いほうの目をかくして弱視の目を使わせる遮閉法が基本です。
3歳以下の幼児の弱視は、遮閉法だけで、多くのお子様の視力が回復します。
遠視が原因でおこる遠視性弱視には、片目の弱視(不同視弱視)と、両目の弱視(屈折性弱視)がありますが、両方とも眼科医の指示に従ってよく度の合った眼鏡をかけることで良くなります。
先天白内障、眼瞼下垂などによる廃用性弱視は、弱視を引き起こす原因となっている病気をなるべく早く手術することが、治療の基本です。

近視

小児の近視は、一般的に学童期に始まることが多いですが、最近では低年齢化が進み、早い場合は6歳未満で発症することもあります。近視の進行は17歳頃まで続く傾向があり、低年齢での発症ほど近視の度数が強くなる傾向があります。
近視は屈折異常の一種で、網膜の手前で焦点が合ってしまうため、遠くの物がぼやけて見える状態を指します。この現象は、角膜から網膜までの距離が長いことや、角膜や水晶体の屈折率の変化によって引き起こされると考えられています。
「近視」になると、近くのものははっきり見えますが、遠くのものがぼやけて見えます。
近視の症状は小学生頃から現れることが多く、遠くを見るためには網膜上にしっかりと像を結ぶために眼鏡などでの矯正が必要です。

子供の近視サインは早期発見が大切

POINT

現代の子供たちは、テレビやゲーム、スマートフォンなどのデジタルデバイスに幼い頃から触れる機会が増えています。そのため、知らず知らずのうちに目を酷使してしまうことが多くなっています。子供自身は見えにくさや目の疲れ、炎症などを自覚しにくいため、周囲の大人が正しい知識を持ち、適切なケアを行うことが重要です。
視力の低下に気づくためには、以下のような症状に心当たりがないか確認し、子供の近視度をチェックしてみましょう。
1つでも当てはまったら早期の検査・治療を受けることが大切です。

遠くを見るときに目を細めて見ている。
横目や片目で遠くを見ようとするクセがある。
首を傾けてモノを見るクセがある。
本やテレビを見るときの顔を近づける。
文字や看板などを読み間違える。
姿勢が悪く猫背で、机に覆いかぶさっている。
黒板が見えにくいと訴える。
目をしょぼしょぼさせる、まばたきが多い。
漢字の書き取りをよく間違えるようになった。
※先生の書く黒板の文字の細かい部分のハネやトメまで見えていない可能性がある。
目の疲れや頭痛を訴えるようになった。

近視の治療方法

小児の近視治療は、あくまでも進行予防・抑制が目的です。小児の近視治療の主流は、低濃度アトロピン点眼治療とオルソケラトロジー治療です。また、近年注目されているレッドライト治療も、近視進行抑制に有効な可能性が示唆されています。
屈折異常による近視の場合は、眼鏡やコンタクトレンズで矯正します。多焦点ソフトコンタクトレンズや累進/多焦点眼鏡を使用することで、近視の進行を抑えることも可能です。

リジュセアミニ点眼薬（低濃度アトロピン）

リジュセアミニ点眼薬（低濃度アトロピン）とは、参天製薬とシンガポール国立眼科・視覚研究所が共同で開発し、2024年12月に厚生労働省より製造販売の承認を受けた低濃度アトロピン点眼薬の1種です。

リジュセアミニ点眼薬の効果として、眼軸の伸びの原因となる「ムスカリン受容体」という部位に働きかけ、眼軸の伸びを抑えることで、近視の進行を抑制することが期待できます。

1日1回就寝前に点眼するだけの近視抑制治療として、当院でも「リジュセア®ミニ点眼液0.025%」を導入しておりますので、気になる方は下記よりページをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせくださいませ。

オルソケラトロジー

オルソケラトロジー（Orthokeratology）は、手術を必要としない視力矯正の新たな選択肢です。レーシックのように不可逆的（元に戻せない）な手法を用いることなく、就寝中に特別なコンタクトレンズを装着するだけで視力を改善できる、低リスクな治療法です。レーザーやメスで角膜を削ることはないため、治療を中止すれば角膜は元の形に戻ります。

この治療法は、子供の近視の進行を抑える効果が期待でき、小学生の段階から取り入れることで将来的な強度近視の予防にもつながります。

レッドライト治療法

レッドライト治療は「ごく弱い650nmの低出力赤色光線（レッドライト）を定期的1日2回、1回3分間覗き込む」という非常に簡単な方法で、近年注目を集めています。この方法を適切に実施することで、近視の進行を約90%抑制する効果が確認されています。

お気軽にお問い合わせください。

ザ・タワー十条よつば眼科医院では、WEB予約またはお電話予約を承っております。予約していただくことによって、診療までの待ち時間が少なくなります。
※ご予約なしの場合でも診察は可能です。ただし、ご予約の方が優先となりますので、予めご了承ください。

※視野検査・眼鏡処方・コンタクトレンズのご予約はWeb予約では承ってません。直接当院へお問い合わせください。

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